増資で株価はこう変わる
このページではJ-REITのイベントである「増資」について解説します。 なぜ「増資」をするかというと次の2つの理由 からと言われています。
1.資産規模の拡大
REITは物件を取得して、資産規模をどんどん拡大していきます。そのための資金調達をこの「増資」という方法で行っています。物件を取得して規模を拡大していく(外部成長)を市場が評価するということもあり、この増資はREITで定期的に訪れるイベントのようなものです。
2.借入金比率を下げる
物件取得をすると借入金比率が上昇していきます。目論見書にこの借入金比率の上限が書いてあり、それを公表していること、また借入金が多いと、金利上昇の影響をもろに受けるということで、この「増資」を実施して借入金の比率を下げます。
ではこの「増資」が行われると、どのような影響があるのでしょうか?
1番分かりやすい説明として、2005年に起きたライブドア vs フジテレビの攻防を例に説明するのがいいと思います。フジテレビ側が大量の株式発行をおこなって、自分の身を守ろうとしたことがありました。あの時問題となったのが、1株あたりの利益が希薄化するということでした。
J-REIT増資の実例
8961森トラスト総合リート投資法人で実際あったパターンです。
株価100万円 発行済み投資口数 16万口 利益28億8千万円 分配金 28億8千万円 ÷ 16万口 = 18000円 |
ここで8万口、「増資」します。
株価100万円 発行済み投資口数 16万口+8万口 = 24万口 利益28億8千万円 分配金 28億8千万円 ÷ 24万口 = 12000円 |
増資を行うと、「1口あたりの利益(分配金)が減り、利回りも下がる」そのため株価にはマイナスということになります。
しかし・・・・
最近ではこの希薄化を避けるために、増資と同時に「物件の取得」を発表、その物件の収益を寄与させて希薄化を避けるREITが増えてきます。
「増資」 とREIT株価の動きの実例
「増資」を行った場合の株価の動きを、2つのREITを使って説明したいと思います。
1. 1口あたりの希薄化が生じ、分配金が減り株価が下がったケース
3269 アドバンス・レジデンス投資法人に移行する前の、日本レジデンシャル投資法人が増資した時のニュースです。
<増資の発表>
日本レジデンシャル投資法人が2回目の投資口の追加発行を行うことを発表。発行口数は41,000口。その他オーバーアロットメントによる売出1,482口(上限)を行う。今回の発行で総投資口数は最大で144,327口、以前との比較で42%増の投資口数になる。
<同時に発表した業績予想修正のお知らせ>
第4期(2005年11月)の業績予想を発表。第4期は上記投資口の増加に伴い、第3期業績予想13,073円に対し15%減の11,029円となる見通し。
8962日本レジデンシャル投資法人の株価 単位(千円)
増資発表前日 | 増資発表 | 発行価格決定日 | 交付日 | 発行価格 | |
2005/5/18 | 2005/5/19 | 2005/6/6 | 2005/6/17 | 2005/5/18 | |
8962日本レジデンシャル投資法人 | 667 | 670 | 643 | 635 | 630.1 |
増資発表前後では株価は変わっていませんが、増資の交付日では増資発表時の株価から5.2%減という結果です。
2.1口あたりの希薄化が生じず、分配金が増え株価が上がったケース
8952 ジャパンリアルエステイト投資法人の増資のニュース
<増資の発表>
8952ジャパンリアルエステイト投資法人が投資口の追加発行を行うことを発表。発行投資口数は85,000口。32%増加し、全体で345,400口となる
<同時に発表した業績予想修正のお知らせ>
第8期は上記投資口の増加に伴い、第3期業績予想15,400円に対し2.6%増の15,800円となる見通し。2004年11月19日以降取得の物件収益が寄与するためである。
8952 ジャパンリアルエステイトの株価 単位(千円)
増資発表前日 | 増資発表 | 発行価格決定日 | 交付日 | 発行価格 | |
2005/5/18 | 2005/5/19 | 2005/6/6 | 2005/6/17 | 2005/6/6 | |
8952ジャパンリアルエステイト | 859 | 850 | 843 | 871 | 826 |
増資発表前後では株価は変わっていませんが、増資の交付日では増資発表時の株価から2.5%増という結果です。
全てがこのパターンに当てはまるわけではありませんが、増資の基本パターンとして覚えておくのもよいかと思います。分配金の増減率によっても変わってきます。利回りがどれだけ変わってくるかチェックする必要があります。
増資に参加する場合、発行価格決定日の終値の2%のディスカウントというケースが多いです。
上記ジャパンリアルエステイトですと
843千円 × 2%のディスカウント = 826千円 (発行価格)
という感じです。